恋人に失望することは、本当に悪いことなのか?
人はなぜ恋人に失望するのか?
私たちが心理的に成熟していくプロセスには、「他者に失望すること」に耐える力が必要不可欠です。
少し意外に感じられるかもしれませんが、これはとても大切な成長の一部です。
大人の関係性というのは、たとえどれだけ大切な相手であっても、ある程度の「失望」を避けて通ることはできません。
それは関係がうまくいっていないからではなく、誰であっても、私たちのすべての期待やニーズを完全に満たすことはできないからです。
特に、子ども時代から持ち越してきた「無条件にわかってほしい」「すべてを受け入れてほしい」といった深い欲求を、誰かひとりが満たすことは不可能です。
ですが、ここで大切なのは、失望そのものが関係の失敗を意味するわけではないということ。
むしろ、それは「現実的な関係性」が築かれはじめた証でもあります。
私たちが向き合っている相手は、理想の人ではなく、ひとりの独立した心を持つ「人間」です。
そして残念ながら、この当たり前の事実に直面することは、私たちにとって時にとても苦しいことでもあります。
「大人の愛」とは、自分のことをすべて理解してくれる、完璧に満たしてくれる存在がいるはずだ、という“全能感”や幻想を手放すところから始まります。
私たちはいずれ、「誰かが自分の孤独を癒してくれる」「欠けた部分を埋めてくれる」「見捨てられた感覚を完全に消してくれる」といった思いを手放さなければなりません。
セラピーにおける失望
このような観点から考えると、セラピーの目的は「失望をなくすこと」ではなく、「失望に耐える力を育むこと」にあるとも言えます。
誰かを理想化するのではなく、その人の限界や不完全さを受け入れていくこと。
そこから、本当の意味での親密さや信頼が育っていくのです。
セラピストもまた例外ではありません。
たとえ一貫した関わりを持っていたとしても、セラピストはやがて、クライアントにとって「失望を感じる存在」となることがあります。
しかしそれは、セラピーが深まり、より現実的で信頼に足る関係が築かれ始めた証とも言えるでしょう。
本当のつながりは、「この人は私の幼少期の傷を癒すために存在しているわけではない」と気づくところから始まります。
それは悲しいことではなく、むしろ成熟した愛と親密さへの第一歩です。
このように、他者に失望することは、心の距離が縮まった証でもあります。
理想の人ではなく、目の前にいる「その人」と向き合うこと。それは時に苦しく、勇気のいるプロセスかもしれません。
けれど、その現実を受け入れた先にこそ、本当の意味でのつながりや、深い親密さが育まれていくのです。
あなたも失望を恐れず、その先にある関係性の豊かさに目を向けてみませんか。

