精神的健康とは何か
病気の「症状」に注目するだけでなく、自分の健康的な側面に目を向けることもとても重要なことです。
では、心の健康的な部分、「精神的な健康」とはどのようなものなのでしょうか?
この記事では、世界的に有名な精神分析家のNancyMcWilliamsさんが示した精神的健康の定義をご紹介します。
NancyMcWilliamsの定義は以下の10個が安定していることだと述べています。
- 基本的信頼感・安心感
- 主体性 自己効力感
- 自分または他者に対する統合され一貫した捉え方
- 自尊心(現実に基づいた・妥当な)
- 感情の調整力 レジリエンス
- 自分または他者の内的世界について考え、理解すること 共感
- 自分にも他者にも同等に貢献する力
- 活動性・活気 遊びの精神
- 感謝・受容の気持ち・許す心
- 適応的かつ柔軟な防衛
次から詳しく見ていきましょう。
①基本的信頼感・安心感
基本的信頼感や安心感とは、他者との関係において安心し、他者を信頼できることです。
また、自分が安全な立場や安心できる関係性にあるかを評価できることでもあります。
精神的健康にとって、家族・友人・パートナーに対して信頼感があるかどうか、一時的に離れることになっても、情緒的に不安定にならずにいられるかどうかが大切です。
②主体性・自己効力感
主体性・自己効力感とは、自分の人生を自分自身の力で、自分で選んで決めているかどうかです。
また、対人関係において主体的に動いているかどうか、とも言えます。
私たちは、状況は変えられないときが多いけれど、例えば状況に対する見方や視点を変えると言った、自分の体験を捉え直す柔軟性やそれに影響を与える力を持っています。
③自分または他者に対する統合され一貫した捉え方
これは、過去の自分に対する理解や共感があるか、そして未来の自分を想像できるかどうか、ということです。
また、自分と他者について一貫した見方をしているかどうかも指しています。
もしあなたが、他者や自分の多様な部分・曖昧な部分に耐えられず、良いか悪いかだけの部分的な見方でとらえていたら、他者や自分の人間性を受け入れることが難しくなります。
反対に、「あれは私じゃないわ!」と思わずに、醜いと思っている過去の自分を見つめることができたら、連続感があると言え、変化が可能であることがわかります。
なぜなら、人は同時にいろんな役割(母、息子、上司、OL、障害者など)を持ちながら、同一人物であり続けられるからです。
④自尊心(現実に基づいた・妥当な)
これは、人生の様々な変化にもかかわらず、自分の力を評価しそれを頼りにできる力です。
自尊心は過度に低すぎても、過度に高すぎてもいけません。
他者からの批判や賞賛に振り回されることなく、常に安定している必要があります。
自分に対する程よい基準があり、そこから少しずれても自責的にならないことが大切です。
⑤感情の調整力 レジリエンス
これは、人間の全ての感情を体験し、許容できる力です。
私たちは、受け入れ難い感情を拒否する傾向にあります。
しかし、どの感情にもちゃんと意味があります。
いわゆる「ネガティブな感情」にも良い意味があるのです。
詩人のルミが「どの感情も、突然の訪問者としてだけど、意味のあるものとして受け入れなさい」と言っていたように、どの気持ちでも圧倒されずに、無力にされずに耳を傾ければ、ちゃんとそこにある意味を見出すことができるからです。
⑥自分または他者の内的世界について考え、理解すること 共感
これは、他者の視点を反映する力です。
言い換えると、自分の内的体験を理解することができているか、自分を他者視点において、他者の体験を想像し理解することができるか、ということになります。
これらにより、他者との間に繋がりが生まれ、他者の行動が明確化され、予測可能になります。
⑦自分にも他者にも同等に貢献する力
これは、他者と時間を共に過ごすことができる力であり、一人でいられる力でもあります。
人は、自分の権利を守ることができ、ときにはコミュニティに貢献することができると、様々な環境で安心して過ごせます。
人生には、他者と協力することが求められる場面もあれば、一人で抱えることが求められる時もあるため、その両方が大切だということです。
⑧活動性・活気 遊びの精神
遊びは、人生の重要な楽しみの一つです。
そしてそれは、子どもだけでなく大人に関しても言えることです。
しかし、感情が麻痺し、乖離状態や防衛的な構えなどがあると遊びができなくなります。
自然な状態で過ごし、遊べる空間が自分のなかにあることが大切です。
⑨感謝・受容の気持ち・許す心
人生には、残念ながら変えられないものがあります。
そのため、それを受け入れ、悲しむことが必要です。
そして、自分や他者を許し、慈しみの心を持つことが大切です。
最初に出会ったとき、他者を自分にとっての理想と考えることは自然なことですが、徐々に他者をありのままの姿で受け入れることが必要になります。
⑩適応的かつ柔軟な防衛
不快な感情や経験、関係性が生じると、私たちはそれまでに習得し使い慣れた方法で、自分たちを守ったりします。
その中で、かなり変わりにくい自動的な防衛の仕方があります。これは、反対に物事を悪化させることもあります。
これらを、適応的でない・助けにならない防衛と言います。
困難にあった時に助けになる防衛とそうでないものがあり、柔軟な防衛の仕方をすると、主体的に行動し困難を乗り越える際に選択肢も増えてきます。
適応的な防衛であればあるほど、物事がうまく進むと言えます。
最後に
人は困難に直面した時、その困り感やできていないことに目を向けがちですが、現在の健康な部分に目を向けることも同じくらい大切なことです。
今回ご紹介した定義を見て、自身の精神的な健康を見つめ直す機会にしていただければと思います。

